uzu42 という自作キーボードを設計しています

キーボードは完成品を選んで使う。これが普通のことだと思っていました。 しかし自作キーボードはパーツや仕上げ方も個別に選んで組み立てる。 世の中に存在しないパーツがあれば設計して製造できる。  必要な機能がなければファームウェアも書き換えることで付けてしまう。  完成品のキーボード全体を雑に認識していただけだったのに自作キーボードは配列、構造、基板の素材、スイッチ、スプリング、潤滑油、キーキャップ、キーマップ、ネジ、スペーサー、プログラム、、etc と選択肢の解像度がまるで違いました。 まずはどこからはじめるかワクワクのはじまりでした。

キットを作ってみる

百聞は一見にしかずということでまずは作ってみることにしました。

meishi, Lily58, MiniAxe, Claw44を組み立ててみました。はんだ付けに失敗して遊舎工房の方に助けていただいたり、はんだ付け動画で学習したり、工具を揃えたりしつつ自作キーボードに慣れていきました。

4つのキーボードが完成する頃には自作キーボードでやれることがだいたい把握できました。また Claw44 はアルファ版の時にPCBとプレートを譲っていただいて部品はすべて自分で揃える形で組み立てました。ビルドガイドもなかったため ふくさん にはいろいろと教わりながら組み立てられたことも勉強になりました。

先行事例に学ぶ

新しいアイデアを想像するための方法の一つは資料を集め先行事例に学ぶことです。海外のキーボードと日本のキーボードが2つのscrapboxに大量に集まっていたのでこれを一つ一つ見ていきながら多様な形状があることを学びました。

scrapbox.io

scrapbox.io

ここで minidoxMiniAxecorne侘寂Alice の形状に強く惹かれました。

電子工作の経験や知識もほとんどなかったので 電子工作入門以前 を購入して基礎知識を学習しはじめました。ただ、この本は途中までしか読んでいないので自作キーボードで扱う範囲の外は今でもほとんどわかっていません。

モックの作成

資料をもとにできるだけ安い方法でモックを作成することにしました。

ここでは HHKB Lite のキーキャップを単に並べるだけで雰囲気をつかもうとしました。この時すでに 侘寂MatrixStaggered を中心にし、薬指と小指を Alice のように曲げ、親指まわりは minidoxcorne のようにせり出し、キー数は MiniAxe をもとにする形状が良さそうだと感じてミックスしてみていました。指を乗せてみた感じもまずまずだと感じこれをもとに仕上げることを最初の目標にしようと思いました。

目標が決まったらスイッチ込みで動作するモックが欲しくなります。

2DCADで図面化したものをプリントアウトしてプラスチック製のダンボールに貼り付けカッターで切り抜き、トッププレートのモックを作成していきました。スイッチをはめてみて具合を見ていく形で試していました。結線せずに単にカチャカチャやるだけでしたが随分と発見があり、調整しながら作っていたらあっという間に10パターンも作っていました。

この10個目のモックで一旦の区切りをつけ先に進むことにしました。

基板の設計

モックによって物理配列が決まったら基板の設計です。

booth.pm

 必要な知識や手順は全部 foostan さんのこの神本を参考に進めました。一から十まで丁寧に説明されていて何も困らなかった気がします。

設計のための基礎知識が付いたら公開されている corne のデータ を参考にして uzu42 の回路や基板を設計していきました。corne から大きく変更した点は「片面基板にすること」と「i2cのための回路を削除すること」の2点でした。

両面基板は製造コストを低く抑えられるメリットがありますが、自分のような初心者がどちらの面にはんだ付けするか間違えてしまうデメリットがありました。discordでも何名か裏表を間違えてしまい修正している方もいました。そのため多少コストが上がってでも間違いが減る方が良いと思い片面基板の設計にしました。

i2cの削除は自作キーボードキットを純粋にキーボードとしてのみ使うなら重要ではないためです。あと自分が使う予定もないため削除しました。

プロトタイプ

だいたい設計出来たらプロトタイプとして発注し組み立てました。

はじめて自分で設計した基板が動いた瞬間は感動しました。前述の通り電子工作についてあまりきちんと理解できてないのでプロトタイプが特に違和感なく使えるのが不思議な感覚もあります。

自作キーボードと出会ってからここまで約3ヶ月かかっていました。

天キー vol.2

プロトタイプが出来たら感想が欲しくなりました。 天キー にプロトタイプの uzu42 持っていって机に置いたらその横にできるだけ居るようにして触ったり見てる人がいれば声をかけて感想をいただいてました。

スペーサー、配線、論理配列、物理配列、銅箔、色、音、90度問題などなどさまざまな諸先輩方のご意見をいただけてめちゃくちゃ勉強になりました。

クローズドアルファ

プロトタイプできたしいくつかの点をきちんと修正して販売!と行きたいところですが、販売の経験がないのでビビっていました。でも販売はしたい。

考えた結果、天キーで uzu42 を気に入ってくださってた方の中から独断と偏見で数名の方にご協力いただいてクローズドアルファに招待しました。ツイッターのDMでやり取りする形でご協力いただいてます。

クローズドアルファの目的はいくつかあります。

  1. きちんと修正するには時間がかかる可能性があったので修正の粒度を小さくすること
  2. 販売する形に近い状態でキット(基板以外のパーツを揃えたり郵送に耐えられる梱包も含めて)を提供するための練習をすること
  3. まず使ってみてもらってフィードバックをもらうこと。自分とは手の形状が違ったり趣向が異なる方の意見を伺うこと
  4. 小出しに継続的に情報を出すことで uzu42 を忘れないでもらうこと(可能なら周知が進むこと)

命名

自作キーボードの設計をしたら避けては通れないのが名前付け。ドラクエでは兄弟や知人の名前を使うばっかりで命名の経験はほとんどなかったので、何から決めてよいか長い時間迷ってました。

愚直に大量の候補を出し形や想いから絞って決めて行きました。キーボードのコンセプトに関わる部分なので改めてまとめてこのブログに書きたいと思っています。

今後の動き

現在は数名にキットが行き渡ったところになります。組み立てが終わってフィードバックをいただけたらパブリックベータのためのフェーズに入る予定です。プライベートの時間の確保が読みにくい状態のため時期についての予定は立てていません。

とはいえ出来るだけ早い時期にご提供できるように動きたいと思います。

ブログより先にツイッターで情報を公開する予定なのでご興味がありましたら なる@uzu42 (@nrtkbb) | Twitter をフォローいただければと思います。